心臓リハビリテーション~動いて心臓をよくしよう~
循環器センター長 大友 達志
心血管カテーテル治療、ペースメーカー治療など、多岐に渡る心臓治療ですが、心臓疾患治療の基本は生活習慣の改善です。実際、心臓病になると、生活習慣は変えなくてよいのか、激しく動けるのか、食生活は、等の疑問がわいてきます。心臓リハビリテーションとは、これらの疑問にこたえ、患者さんとともに行動するプログラムです。
運動療法
心臓病の人はどのくらい動けるのか。答えは、心臓病の種類、心臓機能の状態により異なります。心臓リハビリテーションでは、各々に合わせ運動量を決め(運動処方といいます)、適度の負荷のもと運動をしてもらいます。ポイントは、無理なく楽しく行える、です。運動の基本は有酸素運動で、ウォーキングは安全かつ効率的で簡単に行える方法です。息の切れない範囲で1日20分~30分、週に2~3回行うのが良いとされています。
食事指導
塩分管理が大切です。1日の塩分摂取量は6g以内とされ、だれでも最初は難しいと感じます。しかし摂取の制限に取り組むと意外と簡単に目標を達成できてしまう事が少なくありません。家族などの協力のもと行うのが成功の秘訣です。脂質の取り方などの指導も行われます。いかがでしょうか。
生活指導
規則正しい生活が重要です。寝不足もよくありません。心臓病の増悪は、生活習慣が関係し、手洗い、口腔ケアなど基本的な自己管理が重要になります。
運動耐容能を高める
心臓病の患者さんには適度の運動(負荷)が必要です。重症の人ほど、症状が心配で動けない、動くと悪化するのではないか、などの理由で活動を制限しがちです。その結果“運動耐容能”が低下します。運動耐容能とはその人が活動できる能力です(簡単に言うと…体力)。運動耐容能は、心機能のほかに、呼吸機能、自律神経機能、骨格筋機能(筋肉)が関係します。心臓病の患者さんは、心機能とともにこれらの機能も低下し(特に骨格筋機能)、これが更なる活動性の低下を招くという負の連鎖に陥っています。心臓自体を治療しても、これらの機能不全を残しては意味がありません。
心臓リハビリテーションとは、この負の連鎖を断ち切るため無理のない範囲で運動を行い、機能不全を改善し(生活習慣の見直しも行いながら)、徐々に活動性を上げていく取り組みです。状況によっては心臓病になる前の活動性を取り戻すことが可能になります。
現在多くの施設で心臓リハビリテーションへの取り組みがなされるようになってきております。皆様も積極的に運動療法を取り入れてみるのはいかがでしょうか。