脳検診(脳の健康診断)について
脳神経外科医長 窪田 圭一
平成は間もなく終わりを迎え、新元号が4月1日に発表されます。平成には｢平和が達成される｣という願いが込められておりましたが、どのような新元号になるのか非常に楽しみですし、また桜が咲く暖かい季節の到来も非常に待ち遠しいです。
私は平成17年に大学を卒業、初期研修2年終了後から脳神経外科を専攻し現在に至ります。脳神経外科学は中枢神経（脳・脊髄）に発生した疾患に対し、外科的治療を行う事に専門性が高く、その対象となる疾患といたしましては、脳腫瘍、脳血管障害、頭部外傷、脊椎・脊髄疾患などが挙げられます。疾患の発生頻度や治療に必要とされる医療設備などから一個人がすべての疾患に対し万遍なく精通する事は非常に困難な事で、病院や先生ごとによって治療可能な疾患に差異があります。当院のような市中病院と言われる一般的な病院では、主な対象疾患が脳血管障害である事が多く、それはその他の疾患と比較し発生頻度が高い事がその一因でもあります。私も今まで経験した疾患の殆どが脳血管障害になります。
脳血管障害とは、頭蓋内血管の閉塞（脳梗塞）、破綻（脳出血、クモ膜下出血）によって引き起こされる疾患の総称を指し示します。再生医療の分野では、神経再生が一つのテーマとなっておりますが、今のところ傷害された神経組織を完全に回復させる方法は見いだされてはおりません。この事が脳血管障害を発症された方に言語障害や手足の麻痺などの後遺症が残る事が多い理由です。どのような疾患も完全に予見・予防をする事は出来ませんが、どの程度の危険性があるのか評価しておく事は非常に大切で、当院では予防医学の観点から脳検診の受診を積極的に勧めております。脳血管障害の危険因子といたしまして、年齢・高血圧症・糖尿病・高脂血症・喫煙などが指摘されております。薬物による内科的治療や外科的治療を用いることで脳血管障害の発生頻度を下げる事が可能な病態が存在いたしますので、これらの危険因子に該当する方は是非脳検診を受けてみて下さい。脳検診は完全予約制をとっておりますので待ち時間は殆どございません。体に無害な磁場を用いたMRI検査で脳・頭蓋内主幹動脈の状態を複数の脳神経外科専門医が厳密に判定し、異常所見が見られた方には日を改めて外来にお越しいただき、結果の説明とより良い状態を維持するために必要な事について助言をさせていただきます。
脳神経外科医の立場から、皆様が健康である事を確認する手段の一つとして、脳検診を積極的に利用される事をお勧めいたします。
