新興感染症について
感染防止対策室 院内感染管理者・看護師 佐々木 みゆき
皆さんは新興感染症という言葉を聞いたことがありますか?
新興感染症とはかつて知られていなかった感染症であり、近年、世界各国で話題になっているエボラ出血熱や韓国で流行した中東呼吸器症候群などをいいます。日々このような新しい感染症の脅威は広がっています。以前は遠い国で起きたことで済んでいましたが、交通機関が発達し、グローバル化が進み短時間で世界各国への移動が可能になったことが影響しているといわれています。
エボラ出血熱は、2014年から急速に西アフリカ周辺国で流行し始めた疾患です。世界保健機関(WHO)の発表によると、2015年6月現在、27,550人もの感染者(感染疑い例も含む)、11,235人もの死亡者(死亡率41%)が出ています。エボラウィルスが原因とされ、人の体液や血液に接触することで感染が広がります。
西アフリカで流行した背景には、エボラウィルスを体内に保有していると考えられているコウモリを食べることや葬儀における死者への接触が挙げられます。これらの行為が感染リスクを高めているとされており、現在のところ治療方法は確立されていません。
中東呼吸器症候群(以下MERS)は2012年頃から中東諸国で流行し始めた疾患で、感染すると次のような症状が出現します。発熱、せき、息切れなどです。下痢などの消化器症状を伴う場合もあります。MERSに感染しても、症状が現れない人や、軽症の人もいますが、高齢の方や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患のある方では重症化する傾向があります。ヒトコブラクダの体内に保有されているMERSウィルスが原因とされ、ヒトコブラクダに接触することやラクダの未加熱の肉や未殺菌乳を摂取することが感染リスクになります。
今回紹介した疾患は、海外で感染して国内に持ち込む可能性があるものです。今は世界遺産を巡る旅などが人気であり、旅行先も色々な国に広がっています。手洗い・うがいの励行はもちろんですが、旅行をする際は自分が行く国で現在どのようなことが起きているかを知ることも大事です。(海外での感染症の流行は検疫所のホームページ等で確認できます。)