福島第一原発事故による被ばくについて
放射線科 放射線技師 阿部 礼
2011年3月に起きた福島第一原発事故により、大量の放射性物質が放出されました。今回はその事故の影響によって、岩沼市に住んでいる方にどの程度体へ害があるのかについてお話ししたいと思います。
どの程度体に害があるかを知るためには、まず自分がどの程度被ばくしたのかを知る必要があります。これは全国各地で測定している放射線の量から推定することができます。当院でも同様に放射線の量を測定しており、その測定値は2ヶ月間の合計で約270[μ(マイクロ)Sv(シーベルト)]でした。これは外部被ばく(主に空気中に漂っている放射性物質からの被ばく)のみを考慮した値ですので、実際は内部被ばく(体内に取り込んでしまった放射性物質からの被ばく)も考慮しなければなりません。岩沼市のように原発から離れている地域においては、外部被ばくと内部被ばくの合計被ばく量=測定値×2でおおよその値を求めることができるため、被ばくの量は2ヶ月間で約540[μSv]と推定することができます。
では、540[μSv]被ばくするとどの程度健康に害があるのでしょうか?
放射線被ばくの影響を研究している機関'BEIR'によると、540[μSv]被ばくするとがんで死ぬ確率は、0.002%上昇(30.3%から30.302%へ上昇)すると言われています。ただし、100000[μSv]以下の被ばくの場合、がんになる確率はきわめて低いため、まだはっきりとしたことはわかっていません。そのため、100000[μSv]以下の被ばくでは、発がんに対する影響は無いと主張する専門家もいます。
被ばくを防ぐ方法としては、外出時マスクを着用する、手洗いうがいを頻繁にする、洗濯を頻繁にする、部屋の拭き掃除をする等があります。
ただし、がんになるかならないかは食生活や喫煙などの影響のほうがはるかに大きいとも言われています。適切な対応ができるように、今後も正しい情報をきちんと知ることが大切かと思います。