てんかんについて
脳神経内科 浪岡 靖弘
てんかん、と聞くとどのようなことを思い浮かべるでしょうか。なかなかイメージのつかない方も多いかもしれませんが、医療者では突然意識を失ってけいれんする疾患というイメージの方が多いでしょうか。
てんかんは、脳の神経細胞が過剰に放電することにより、けいれんや意識を失うなどの発作が一時的に出現し、その発作を繰り返すことが特徴である疾患です。
生涯で1回でも発作を経験する人は人口の約10%、てんかんの診断となる人は約1%で日本には60万~100万人(1000人に5~8人)いると言われています。
発作の内容は人それぞれであり、意識を失うこと以外にも、腕や脚をガクガクさせる・突っ張らせるようなけいれん、口をもぐもぐさせてぼーっとする、言葉が出なくなる、初めて遭遇することが前に経験したかのように感じるなど、放電する脳の部位に応じて様々な症状が出現すると考えられています。 (この症状があるからてんかん、というわけでは必ずしもありません)
また、特に高齢者の方ではけいれんは伴わないものの、ぼーっとする症状や意識の悪い状態が続く発作がみられることもあり、これもまた必ずしも「意識が悪いからてんかん」というわけではありませんが注意が必要です。
治療としては、内服薬による治療が一般的です。内服薬による治療で約70%の方が発作を抑えられているといわれています。
2000年以降、以前と比べると比較的副作用の少ないてんかんのお薬が増えてきていることもあり、以前と比べると治療の選択肢は増えてきました。
その他にてんかんの方では、薬代など医療費の負担を軽減する自立支援医療制度、福祉・就労支援サービスや各種減免のための精神障害者保健福祉手帳の活用、特に内服による治療でも発作がつづいている方の場合は障害者年金制度の活用など生活を支える福祉制度があります。
気になることがあれば日本てんかん協会のWebページや、医師や病院の相談員にもご確認ください。
まだまだ、身近にてんかんの方がいないと情報にふれる機会も少なく、人によってはてんかんに対する認識が不十分なばかりに理解を得られなかった経験のある方もいるかもしれません。 最近では毎年3月26日のパープルデーなど普及活動も活発になってきています。より多くの人にてんかんのことを知ってもらい、理解し合える社会になればと思います。