主要疾患の解説
頚椎症性脊髄症
頚椎に加齢性変化が生じてくると、脊髄周囲の脊椎に骨棘などが形成され神経が圧迫を受けます。その結果として手にしびれ、痛み、歩行障害などが起きてきます。これらの症状が重篤であり保存的治療では改善困難な場合に、手術の適応になります。手術方法は病変の広がりにより、前方アプローチ(前方除圧固定術)と後方アプローチ(椎弓形成術)に分かれます。われわれはより侵襲の少ない前方アプローチを可能な限り選択するようにしていますが、この方法が困難と判断した場合には後方アプローチを用います。
前方アプローチの症例
頚椎前方アプローチの進入経路。食道、気管を内側に、頸動脈を外側に牽引保護し安全に頚椎前面に到達する。
チタン製のケージを使用した、前方除圧固定術の模式図。通常は直径6~7mmのケージを2個使用する。固定性にすぐれ、安全性もあり、固定素材として用いている。従来の腰からの腸骨移植は採骨部の疼痛が強いため、現在は行っていません。




C5/6、C6/7間で脊髄前方からの骨棘により、神経が圧迫を受けている。チタン製のケージを使用して、前方除圧固定術を施行した。手術後症状は速やかに消失し、患者さんは手術後1週間で退院した。
後方アプローチの症例
脊髄がC3からC6/7にかけて、連続的に圧迫を受けている。この症例に対して、C3からC7までの椎弓形成術を施行した。術後症状は軽快し、10日目で退院となった。ただしこのような後方アプローチの場合は、後頚部痛が多少なりとも術後に経験されることが多い。またC5麻痺と言われる、上肢の挙上困難(ほとんどの場合は一時的)が時に問題となる。