負担軽い「低侵襲手術」 読売新聞2010年12月5日掲載記事より転載
病院の実力~宮城編37
今回のテーマは、腰や首の痛みやしびれ、まひなどの手術。医療機関ごとに治療方針が異なるため、医師から詳しい説明を聞いて判断したい。読売新聞のアンケートで、2009年にこれらの手術を行ったと回答した医療機関のうち、あまり体を傷つけない低侵襲手術の件数が県内で最多だった総合南東北病院(岩沼市里の杜)の診療を紹介する。
首や腰の痛みなどの症状が出る場合、安静を保ち、装具装着や痛み止めなどの治療をまず行う。改善しない場合は手術が必要となる。
頸椎や腰椎の「椎間板ヘルニア」は、背骨の骨と骨の間のクッションの役目をする椎間板がつぶれて飛び出す状態をいい、神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こす。若い患者も多い。
手術は画像診断の上、ヘルニア部分を切除する。同病院ではほとんどの場合、顕微鏡や内視鏡を使い、メスを入れる範囲を2~4センチにする低侵襲手術を行っている。体の負担が少ないのが利点だ。
腰椎の手術の場合、メスで切った部分に直径1.8センチの特殊な筒を差し込み、顕微鏡でヘルニアを直接見ながら切除することが多い。傷が小さいため、出血はほとんどない。通常の手術時間は1時間半ほどで、多くは5日間の入院で済む。ヘルニアが小さければ直径7ミリの内視鏡を使う治療も可能で、3日で帰宅できる。
腰や首の治療を専門に行う「脊椎脊髄疾患診断治療センター」長を兼任する脳神経外科医の水野順一 院長は「皮膚や筋肉を極力切らないようにするので回復が早い」と語る。
加齢で背骨を作る脊椎やじん帯の形が変わり、神経が圧迫される「脊柱管狭窄症」の患者も多数同病院で治療を受けている。高齢者が大半だ。
この場合も大半が低侵襲手術だ。その上で、骨は削れても血管や神経を傷つけにくい「超音波骨メス」を使うため、後遺症はほとんどない。術後に背骨がずれないよう、特殊な金具で骨を固定する治療法もあるが、同病院では約1割と少ない。固定すれば背骨周辺が動かしにくくなるためで、「患者さんと話し合い、症状や生活ぶりを聞いて決める」と水野院長は話している。
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