神経難病に対するリハビリテーションについて
脳神経内科科長 加藤 昌昭
神経内科の病気の中には、神経変性疾患いわゆる神経難病といわれる疾患や、筋疾患(筋ジストロフィーやミオパチーと言われる疾患)があります。これらの疾患の多くは年余にわたる長い経過で緩徐に症状が進行していきます。 現在の医療ではまだ病気を治す、症状進行を止める治療がない疾患が多いのがこれら疾患の特徴です。
こういった病気では、疾患によって症状や経過に違いはありますが、手足の動きにくさ、移動歩行の障害、しゃべりにくさ(構音障害)、食事や水分の飲み込み(嚥下障害)、認知機能の障害、心肺機能の低下といった様々な症状が徐々に進行していきます。 更に症状の進行により日常生活のなかで体を動かすことが出来なくなることによって「廃用」と言われる症状も出現してきます。病気の症状と廃用の症状を区別することはなかなか難しいのですが、廃用による症状としてよくみられるものは手足関節の拘縮(固まっていくこと)や痛みがあります。
リハビリテーションというと、脳卒中(脳梗塞や脳出血など)や骨折などのあとに機能回復を目的として行われる機能回復訓練を思い浮かべることが多いと思います。 障害をうけた機能を回復させたり、回復困難な場合残存する機能で生活を補えるように訓練、練習をすることで生活をよりよくすることがリハビリテーションの目標といえます。 神経疾患(神経難病)の場合、リハビリテーションによって病気自体が治るわけではないこと、著しい改善効果は期待できないことから、その有効性を示すことはなかなか難しい部分であります。 しかし、廃用による身体能力の低下を防ぐこと、動作方法の工夫、機能補助具などを用いて能力の維持、生活の維持を行うことは、疾患をもちながら生活を送るうえで重要であり、生活の質の維持のために必要であると考えています。
リハビリテーションを受ける方法として大きく分けて①在宅、訪問で行う、②入院して行う、場合があります。それぞれに特色があるのですが、徐々に症状は進行、変化する神経難病に対する場合には、日常的に①在宅での訪問リハビリを行いながら、ときどき②入院してのリハビリ、状態評価、を行うことが良いと考えています。 入院の頻度や入院期間は症状進行にあわせて数ヶ月に1回や年1回、数週間から1ヶ月程度を主治医と相談しながら決めています。
今はまだ困っていないから、大丈夫。と考えずに将来的に症状が進んだらどのように生活すれば良いかのアドバイスをもらうことも重要なので、ぜひ主治医にリハビリテーションについて相談してみてはいかがでしょうか。