南東北看護師コラム
冬の感染症と手指衛生について
手術室 感染制御実践看護師 佐藤 千春
寒さの厳しい季節になりました。空気が乾燥し冷え込むこの時期は、様々な感染症が流行します。その1つ目の理由として「気温と湿度」が挙げられます。冬は、低温・低湿度を好むウイルスにとって快適な環境であり、空気が乾燥するとウイルスの水分が蒸発して比重が軽くなり空気中に浮遊して伝播しやすくなります。 2つ目の理由として「免疫力の低下」が挙げられます。寒さのため体温が低くなり代謝機能の低下から免疫力も低下します。またウイルスの侵入を防ぐ役割を果たしている鼻やのどの粘膜が乾燥によって傷み、ウイルスの感染が起こりやすくなります。
人が感染症に罹患する要因の多くは、他人の手に付着した細菌やウイルス等が物に付着しそこからまた手を介して鼻や口、眼から体内へと入ることです。人は無意識に眼、鼻、口に触れるのですが、その頻度は1時間に23回にも及ぶというデータがあります。つまり3分に1回の頻度で手指が顔に触れているのです。 そのため、手指が粘膜に触れる前に手洗いすることが大切であり、手洗いの頻度を増やす必要がありますが、日常生活において石鹸と水道水での手洗いを頻回に行うことは簡単なことではありません。しかし、アルコール消毒液があれば、いつでも簡単に手指消毒することができますので、外出時には消毒液を携帯しておくことがおすすめです。
新型コロナウイルスの流行によって、手指消毒の重要性が強調されるようになり、病院で実施されている「衛生的手洗い」が求められるようになりました。「衛生的手洗い」ではアルコール消毒が第一推奨となっています。これは、どこにでも持ち運びができ即効性かつ強力な殺菌力があることと、頻回に使用できることが理由として挙げられます。 適切な手指衛生を行い感染症の予防に努めましょう。
※厚生労働省は、消毒効果が十分に得られるエタノール濃度は「原則70~83%の範囲内であること」としています