胃癌はピロリ菌除菌と早期発見で克服できる?!
副院長・外科科長 吉野 泰啓
ご存じの通り、日本では癌で亡くなる方が年々増えており、2019年も死因の第1位で、約37.6万人(27.3%)の方が癌で亡くなりました。癌で亡くなった方をその部位で分けますと、多い順から、男性は①肺癌 ②胃癌 ③大腸癌 ④膵臓癌、女性は ①大腸癌 ②肺癌 ③膵臓癌 ④胃癌 となっております。
胃癌の発生原因は第一にヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌と略します)、次が食塩で、以下喫煙、アルコール、ストレス、暴飲暴食、刺激物なども因子と言われています。胃癌が日本人に大変多かったことは良く知られているのですが、以前その原因は食生活、すなわち塩分摂取過多、焦げた魚を好んで食べるなどにあると言われてきました。 もちろんそれも大きな原因なのですが、ピロリ菌が胃癌の大きなリスクであることが知られてきました。日本人の高齢者はピロリ菌に感染している人が多く、50歳以上の方は70%以上が感染していると言われています。喫煙の胃癌発生リスクは非喫煙者の1.6倍と言われていますが、ピロリ菌感染者の胃癌発生リスクは非感染者の約5倍とも言われ、タバコよりはるかに高いリスクです。 また、これまで胃癌になった方の99%はピロリ菌に感染していた、一方ピロリ菌陰性の方の胃癌発生率は1%以下であったとのデータもありますので、ピロリ菌を積極的に除菌することで、胃癌の発生をかなりの確率で抑えることができると考えられます。(逆に、ピロリ菌保菌者が、タバコを吸いながら、塩分たっぷりの焦げた魚をつまみに深酒していたら、 胃癌になって当然かもしれません。)ピロリ菌の早期発見のためにも、積極的に健診を受けるようにしましょう。
また早期胃癌と言って、胃壁(粘膜)にうすく広がった癌は内視鏡(胃カメラ)による治療が可能です。「内視鏡的粘膜下層剥離術」と言って、多くは内視鏡室での治療が可能で、これで癌が取りきれれば手術をせずに治ります。是非定期的に胃カメラを受けて無症状のうちに早期胃癌を見つけてもらいましょう。
最後に、バリウムによる胃透視検査ではピロリ菌に感染しているかどうかもちろん診断できませんし、早期胃癌もなかなか発見できません。胃癌検診は透視ではなく、初めから胃カメラを受けていただくのが確実で、検査も一度ですみますのでご相談ください。 以上のように胃癌は、ピロリ菌除菌などによる予防と早期発見による内視鏡治療で、かなりの確率で克服できる癌であると言えるでしょう。