認定看護師コラム
脳卒中発症予防のための危険因子管理(お酒について)
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 澤邉 晃永
新型コロナウイルス感染拡大予防のため、「巣籠り消費」で需要が拡大している商品として「お酒」があげられています。そのため専門機関はアルコール依存に注意を呼びかけているようです。
令和2年もあとわずかです。例年であれば12月にかけて飲酒の機会が増えることがあるわけですが、お酒の席は「3密」によるリスクの回避が難しいシーンの1つでしょう。このような状況の中では、年末にかけて自宅での飲酒の機会はさらに増えるのではないかと思います。
そこで今回は脳卒中発症危険因子の1つである「お酒」についてのお話です。脳卒中治療ガイドライン2015には、「脳卒中予防のためには、多量の飲酒を避けるよう強く勧められる」とあります。詳細を見ると出血性脳卒中(脳出血やクモ膜下出血)と飲酒量の間には直線的な相関関係があるようです。一方で、虚血性脳卒中(脳梗塞)との間にはJカーブ現象が見られたとあります。つまりは脳出血やクモ膜下出血ではお酒の量が増すほど発症リスクも高まるということです。脳梗塞においては、飲酒量が少量から中等量であれば脳梗塞の発症リスクが少なく、多量にお酒を飲むとやはり発症リスクが増すということになります。
●アルコール消費と生活習慣病等のリスク
(1)高血圧・脂質異常・脳出血・乳がんなど
(2)虚血性心疾患・脳梗塞・2型糖尿病
ちなみに多量の飲酒とはエタノール450g/週、少量から中等量とはエタノール1~149g/週とありました。ビール500ml、日本酒1合(180ml)、焼酎0.6合(110ml)の純アルコール量は20g程度とされていますから、ビール500ml缶であれば22.5缶分です。1週間毎日500ml缶3本と少し飲酒すれば到達することになります。ビールで計算するとすごい量になりました。多量飲酒に該当する方は少ないこととは思いますが、アルコール度数の高い酒類だと、その分アルコール摂取量は増えてしまうので注意が必要です。