Withコロナ
呼吸器内科科長 座安 清
中国湖北省武漢市で2019年12月に新型コロナウィルスによる肺炎が複数報告され、急激な勢いで世界中へと拡大しました。日本では1月16日に第1号が報告され、ダイヤモンド・プリンセス号にも対応が行われました。その後封鎖された武漢からチャーター機での受け入れも行われています。徐々に感染者数が増加して4月7日に緊急事態宣言が発令されました。その後世界中で研究が急速に進み、アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に結合し宿主に感染することが明らかになりました。ACE2受容体はⅡ型肺胞上皮細胞だけではなく全身に発現しています。そのため重症者は急激に悪化し多臓器障害で死亡することも明らかになっています。しかし重症化するのはほとんど高齢者や糖尿病などの基礎疾患のある人であり、若い人は感染しても無症状か軽度の症状がほとんどでした。感染症専門家の活躍があり密閉された空間で密集した近い距離で会話や大声を出すと感染しやすいこともわかりました。いわゆる3密です。そのため3密を避けるように強調しています。さらに感染管理の基本であるマスク・手洗い・換気・ソーシャルディスタンスを守るように勧告されています。症状が出る2日前にウィルス量がピークになり感染を引き起こすことが明らかになっているので、感染を防ぐには他人と接触しないことです。5月25日に非常事態宣言は解除されましたが間もなく第2波がやってきました。しかし高齢者は努めて他人との接触を控えていたため重症者は増加していません。予防法や治療法がある程度確立してきたのでCOVID-19もやがてコントロール可能になり、いずれ風邪のコロナウィルスになると思われます。
これまでも人類は感染症との闘いを繰り返してきました。代表的なものは黒死病とスペイン風邪でしょう。黒死病はペスト菌が原因でネズミノミを媒介するネズミを駆除し、抗生剤を投与することで対応できました。スペイン風邪の原因はインフルエンザウィルスで、死亡者は細菌による2次感染で亡くなったのでした。それもいつの間にか季節性のインフルエンザになっています。2009年の豚由来の新型インフルエンザも同様です。ワクチンや抗生剤を駆使して何とかウィルスや細菌と渡り合ってきましたが、今後も新たなウィルスや細菌と対峙することが予想されるため感染対策は今後も継続する必要があります。
厚生労働省「3つの密を避けましょう!」