ワンポイントリハビリ
高齢者のための転倒予防 ~環境編~
リハビリテーション科 副主任 富樫 貴寿
高齢者が日常生活の中で最もケガをしやすい場所はどこだと思いますか?
転倒というと外出時の屋外を想像しがちかと思いますが、実は「自宅」での転倒が1番多いそうです。高齢者の転倒の5割以上が自宅内で発生し、その9割以上が「室内」で発生しているという報告もあります。
転倒場所としては暮らし慣れた「居室・寝室」が1番多く、玄関・廊下・トイレと続きます。自宅の居室は大きな段差や障害物はなく、普段から落ち着いてくつろげる場所のはずですが、それでも油断はできないものです。前月号ではリビングでの環境整備について説明がありました。今回は加えて玄関や浴室など、その他の場所についてもお話しします。
居室での転倒事例で多いのは・・・
・敷居のわずかな段差につまずいた
・カーペットの端に足をとられた
・フローリングの床で滑った
・コード類に引っかかった
すぐできる転倒予防のための環境整備
・絨毯やカーペットは部屋全体に敷くか、端がめくれないよう滑り止め等を使用する。
・コード類はカーペットの下を通すか壁に沿わせる。
・廊下は物で通路をさえぎらないようにする。夜間に暗くて足元が見えない場合は、足元灯などを使用する。
・床が滑りやすい場合には、滑り止めのついた靴下など履物を工夫する。
・玄関など段差が気になる場合は、踏み台や手すりを使用する。
・浴室では、浴槽をまたぐ際に体を支える手すりやボード、滑り止めマットやシャワーチェアなどの福祉用具を使う。
歩行に不安があるときは
・杖や歩行器などを使用する。
杖などの歩行補助具の使用に抵抗のある方もいると思いますが、「転ばぬ先の杖」ということわざもあるように、万が一に備えてあらかじめ準備しておくのも良いのではないでしょうか。
自分に合った物を使用しましょう
・手すりといっても工事の必要ない据え置き式の物や、玄関・浴室に特化したものなど様々です。杖や歩行器も同様に様々な種類があり、何を基準に選べばよいのか迷うかと思います。そんな時は、専門家と相談して自分の状態に適した道具や補助具を選択するようにしましょう。
転倒予防というと身体機能やバランス能力を向上させることが思い浮かぶかもしれませんが、自分の体や能力にあった環境整備や補助具を使用することも転倒を防ぐ有効な手立てと言えます。