心不全パンデミック(後編)
循環器内科科長 密岡 幹夫
心不全の4つのステージ(前号より抜粋)
ステージA:高血圧、糖尿病などの心不全の危険因子を持っている段階
ステージB:心臓の働きに異常が現れてきた段階
ステージC,D:心不全の症状が出てきた段階
ステージAやBの段階において、ご自身でできることは減塩・肥満解消・適度な運動・禁煙・節酒などです。運動は、ウォーキングなどの有酸素運動を1日30分以上、週3日以上行うことが目安です。減塩ですが、WHOでは減塩目標を1日5gとしています。日本人は平均でこの倍の塩分を摂取していると言われています。カップラーメン1個にはおおよそ5gの塩分が含まれていますので、達成はかなり大変ですが、予防のためには目標に向けて日々努力する必要があります。
心不全の症状が出てきたらステージCやDです。心不全の経過を改善するためには症状を早期に察知して、心不全の治療を開始することが大切です。心不全の主な症状は息切れとむくみです。息切れは当初は坂道を歩いたり階段を上がったりした時に感じる程度ですが、進行すると安静時にも感じるようになります。心不全のむくみは急激な体重増加を伴って起こることが多いとされています。体位の影響でむくみが起こったり、心不全以外の病気(肺疾患など)で息切れが起こったりすることもあります。気になる時は外来を受診して心臓の検査を受けることをお勧めします。検査により心不全が原因となっているか否かが判定できます。
ステージCやDに至った心不全の治療は薬が中心となります。原因となる疾患によっては冠動脈形成術、冠動脈バイパス術、人工弁置換術、不整脈アブレーション術、ペースメーカー植え込み術等の侵襲的な治療が必要となることもあります。ステージCやDに至ってしまうとその後の経過は決して良くないのですが、治療法も日々進歩しています。進行した心不全に対しては他病院での先進的な治療も含めて治療法を検討していきます。
心不全は日本でも人口の高齢化に伴いますます増加してきています。まさに心不全パンデミックの状態です。心不全への対処として最も大切なことは予防です。自分は若いから、あるいは家族に心不全の人がいないから関係ないと思わないで今日から生活一般を見直すことを始めて、心不全パンデミックに備えてください。