認定看護師コラム
脳卒中と廃用症候群について
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 澤邉 晃永
廃用症候群という言葉はご存知でしょうか。廃用症候群とは廃用(使わないこと)、すなわち不活発な生活や安静によって起こってくる全身のあらゆる器官、機能の生じる心身機能の低下です。
また、大川ら1)は廃用が「廃棄」、「廃棄物」などの言葉を連想させやすく、当事者に不快感を与えるという理由から、廃用症候群ではなく「生活不活発病」という用語を用いていますが、用語の完全な統一は行われていないようです。
具体的な身体の一部に起こるものとしては骨粗鬆症、関節拘縮、筋委縮、褥瘡(いわゆる床ずれ)、深部静脈血栓症などがあります。全身に影響するものとしては、心肺機能低下、消化器機能の低下、起立性低血圧などがあります。精神や神経のはたらきに起こるものとして知的活動の低下やうつ傾向などがあげられます。
廃用症候群をおこすと疾患の回復に影響があるだけでなく、回復まで2-3倍の時間を要する可能性があります。特に脳卒中においては発症時から意識の障害、身体の麻痺、治療上の必要な安静などで廃用症候群が発生するリスクが高くなると考えられます。しかし廃用症候群の予防は可能です。具体的な方法の一つとしては、可能な限りベッドでの療養から離れること、すなわち早期離床があげられます。入院した際、まだ起きるのは辛いと考えているのに看護師やリハビリテーションスタッフ、医師らからベッドからできるだけ早く離れるよう促されるのはこのような理由のためです。しかし、病後の当事者としては、体を動かすことは身体的にも精神的にも辛いものです。当事者の個々の状態を勘案して心体両面から支えられるように、十分にコミュニケーションを図りながら看護を提供して参りたいと思います。
【引用文献】
1)大川弥生 生活不活発病(廃用症候群)新・セミナー介護福祉:リハビリテーションの理論と実際 ミネルヴァ書房 2007年 44-46