認定看護師コラム
「周術期口腔機能管理」について
がん化学療法看護認定看護師 佐藤 あや
「周術期」というと、あまり聞きなれない言葉かと思います。
「周術期」とは、手術を目的とした入院、麻酔、手術、回復までの一連の期間を示します。この期間、専門スタッフが様々な方面からお手伝いをさせて頂くわけですが、周術期の口腔内のケアも、無事に手術を終え順調に治療を進めるための重要なケアとなります。では、口の中にトラブルがあると、どの様な問題が予測されるのでしょうか。例えば、全身麻酔をかける際にぐらぐら動く歯(動揺歯)があると、気管挿管時に歯の脱落や誤嚥の危険があります。口腔内の衛生状態が不良な場合、う蝕や歯周病などの歯性感染症から、肺炎や感染性心内膜炎などの合併症を起こしてしまうこともあります。がん化学療法を行う患者さんでは、抗がん剤の副作用により口内炎などの合併症がおこることがあります。そこで、全身麻酔下での手術や化学療法の治療を受ける前に口腔内の衛生状態をチェックし、周術期の口腔関連の合併症を予防・軽減することを目的として「周術期口腔機能管理」が行われています。周術期の口腔ケアを導入することで、術後肺炎などの歯性関連の合併症が10~20%減少し、これにより全身麻酔手術後の患者さんの在院日数の減少や予後の改善などが多く報告されています。
当院では岩沼歯科医師会の協力のもと、医科-歯科病診連携事業を2018年7月よりスタートしました。岩沼歯科医師会(名取市・岩沼市・亘理町・山元町)に所属されている歯科クリニックと連携して、外科系の全身麻酔下の手術を受ける患者さんや、化学療法を受ける患者さんに治療を行う前に歯科受診をして頂き、安全に治療を進められるような体制を整えました。お口の中の健康チェックや、歯石の除去、歯磨き指導をしてもらい、治療に臨んで頂いています。
どの様な疾患でも、お口の中の健康はとても重要です。普段から定期的な歯科受診や口腔内のケアに関心を持って頂き、歯磨きをして頂きたいと思います。