認定看護師コラム
抗がん剤と口腔のはなし
がん化学療法看護認定看護師 佐藤 あや
がんの治療中には、治療法によっては口腔内に影響を受けることがあります。特に化学療法の治療中は大きな変化を及ぼすことが少なくありません。口腔内の粘膜は、感染症などの細菌が体内に侵入するのを防ぐため、絶えず活発に分裂・増殖している粘膜であると言われています。化学療法は、がん細胞だけでなく健常な細胞にも影響を及ぼす為、口腔内に少しの傷が加わっただけでも炎症が起こり、口腔粘膜炎を発症します。また、抗がん剤の一部には、唾液の量を低下させるものもあります。唾液には、食物の消化や、口腔内の自浄作用がありますが、唾液量の低下により、口腔乾燥症を引き起こし、飲み込みがしにくくなったり、味覚障害や自浄作用の低下をきたします。そして、抗がん剤の薬剤によっては副作用として口内炎を発症しやすいものがあります。口内炎を悪化させてしまうと、痛みにより食事が摂れなくなる、不眠、会話もしづらいなどのトラブルに発展する事があります。
これらの事を予防するために、口腔内を清潔に保つ、口腔内を保湿する(保湿効果の高いジェル、軟膏、スプレーの使用)、虫歯の治療をしておくことなどが必要になります。
がんの治療中には健康な口で、しっかりと食事が出来ることがとても大事になります。
がん治療に限らず、普段からかかりつけの歯医者さんを決め、口腔の定期ケアを受けて頂ければと思います。