心筋梗塞を発症する前に ~心臓ドックをご存知ですか?~
循環器科医長 武蔵 美保
日本人の死因の第1位はご存知のとおり悪性腫瘍ですが、第2位は何かをご存知ですか?答えは、心疾患です。心疾患による死亡率は年々増加傾向にあります。心疾患といってもいろいろな病気がありますが、そのなかで「急性心筋梗塞」、「その他の虚血性心疾患」が死因の多くを占めています。これらは、心臓の栄養血管である冠動脈が動脈硬化で狭くなったり、完全に詰まったりしてしまう病気です。動脈硬化の病気ですから、高齢の方がかかりやすい病気と思われていますが、食生活の欧米化やライフスタイルの変化などにより、特に男性では30歳代、40歳代で発症することもそれほど珍しくありません。
心筋梗塞になり、冠動脈が突然詰まってしまうと、心臓の筋肉の壊死はどんどん進んでいきます。突然危険な不整脈で心臓が停止してしまうこともありますので、1秒でも早く病院を受診し、カテーテルなどによる治療をうけることが大切です。ただし、無事に治療をうけることができても、心筋梗塞が原因で将来危険な不整脈を発症したり、心不全を発症したりしてしまうことなどもあります。つまり、一度心筋梗塞を起こしてしまうと、その後一生つき合っていかなければいけない病気なのです。
心筋梗塞は、胸の圧迫感、しめつけなどの症状が何時間も継続します。その前に数分から30分程度でおさまる同様の症状を前兆として感じることがあり、その段階で病院を受診し治療をうけることができればいいのですが、全ての人に前兆があるわけではありません。特に糖尿病患者さんは、神経障害のために、前兆症状がなく大きな心筋梗塞発作で初めて病院を受診されるケースが多くみられます。更にやっかいなことには、通常健診などで行っている心電図では心筋梗塞の予知を行うことはかなり困難です。心筋梗塞の前段階にある場合でも、胸のしめつけなどの症状がないときの心電図は異常がでないことが多いのです。
当院では健診で心臓ドックを行っており、冠動脈CT検査をうけることができます。胸が苦しいなどの自覚症状がなくても、CTという比較的体に負担が少ない検査で狭心症、心筋梗塞の検査ができます。高血圧、コレステロールが高い、糖尿病などをお持ちの方は、明らかな胸の症状がなくても一度健診で冠動脈CT検査をうけてみてはいかがでしょうか。心筋梗塞の前段階で治療を行うことができるかもしれません。詳しくは当院の健診センターにお問い合わせください。