薬局だより
過活動膀胱について
薬局 薬剤師 梶原 光太
まだまだ寒い日が続いていますが、寒いとどうしてもトイレに行きたくなりますよね。その理由はいくつか考えられていますが、寒いと汗をかかなくなるため"体の水分を外に出そうとして尿量が増える"という理由が有名なようです。いくらトイレに行く回数が増えても、通常はある程度我慢することができますが、我慢できないほどの尿意に襲われる病気があります。今月はそのような病気の一つである『過活動膀胱』について説明します。
過活動膀胱ってどんな病気?
過活動膀胱とは、トイレが近い(頻尿)、急に我慢できないほどの尿意が起こる(尿意切迫感)、我慢できずに尿が漏れる(尿失禁)などの症状を示す病気です。このような症状は膀胱や腎臓に他の病気がある場合にも現れることがありますが、当てはまる病気がない場合に過活動膀胱と診断されます。過活動膀胱の患者は、日本では約810万人程度と推定されており、70歳以上では3割以上の方がこの病気にかかっていると考えられています。
そんなに怖くない病気!?
過活動膀胱と診断されても、病気そのもので命に危険が及ぶことはありませんし、痛みを伴ったり、障害が残るわけでもありません。しかし、トイレの不安から外出を控えたり、睡眠中に頻繁にトイレに行きたくなり睡眠不足に陥ったりすることがあるため、QOL(生活の質)を著しく低下させる病気なのです。また、病気の性質上、他の人に相談しにくく、諦めたり我慢したりして悩んでいる人が多いのが現状です。実際に治療を受けている人は70~80万人と、推定患者数の10分の1程度となっています。
治療法は?
過活動膀胱の治療法としては、薬物療法と行動療法があります。薬物療法では、膀胱を収縮させる物質であるアセチルコリンの働きを弱める薬剤(抗コリン薬)が使用されます。そうすることで、膀胱に尿を溜めやすくなります。また、男性の場合では前立腺肥大症によって尿が出にくい期間が続くと過活動膀胱の状態になる事があるため、前立腺の筋肉を緩める薬剤(α1受容体遮断薬)を使用することがあります。
行動療法では、生活習慣を改善したり、膀胱や骨盤底筋を鍛えることによって、排尿をコントロールしやすくします。
抗コリン薬…………
デトルシトール、ベシケア、ステーブラ、ウリトス、バップフォー など
副作用:口が渇く、便秘、尿が全然出なくなる(尿閉) など
α1受容体遮断薬……
ハルナール、フリバス、ユリーフ など
副作用:めまい、頭痛、低血圧 など
その他………………
ベタニス など
副作用:便秘、口が渇く など