薬局だより
薬ができるまで
薬局 薬剤師 中田 真生
化学物質が薬として人に投与されるまでには、長い時間をかけて実験・研究が繰り返されています。今回はその流れをご紹介したいと思います。
①基礎研究
多くの化学物質の中から、様々な試験方法により「薬のたまごの候補」を選び出します。この候補となる化学物質は、薬草やカビ等の微生物・海中のヘドロの中など多種多様なところから集められます。この「薬のたまごの候補」が薬になる確率は1万分の1とも言われています。
②非臨床試験
「薬のたまごの候補」の中から「薬のたまご」を探していきます。この段階ではまだ人には投与されず、動物実験などで効果や安全性、有害な副作用について調べていきます。この試験の結果により「薬のたまご」が選ばれ、次の試験に進むことができます。
③臨床試験(治験)
「薬のたまご」を人に投与していく試験です。この試験は3相に分かれています。
<第Ⅰ相>
初めて人に投与される試験です。少数の健康な人に投与し、生体内での吸収・代謝・排泄などを調べます。主に安全性を調べていきます。一部の薬ではこの段階から患者さんに投与される場合もあります。
<第Ⅱ相>
少数の患者さんに投与し、有効性や投与量、副作用などを調べていく試験です。
<第Ⅲ相>
多数の患者さんに投与していく試験です。この試験では実際の治療に近い方法で有効性と安全性を調べていきます。この試験ではすでに販売されている薬との比較や、プラセボ※との比較により効果を検証していきます。
※本物の薬と外観は同じだが薬の成分が入っていない偽薬。薬の効果が思い込みからきていない事を立証するために用いられます。
この試験に合格した「薬のたまご」が厚生労働省の審査に合格すると、晴れて「薬」となることができます。薬になることで研究・開発は終了ではなく、薬となった後もまだまだ副作用などの情報は集められていきます。これで薬としてはやっとスタートです。ここまでくるのに10~15年の年月と約150億円の開発費がかかると言われています。何気なく服用している薬の1つ1つが、多くの人の努力によってできています。